|
パリにはユースホステルがたくさんある。2回目に泊まったユースは、バスティーユ近くで一泊13ユーロという激安ユースだった。ベッドは軍隊で使うような簡易ベッド。三泊という期限が切れてユースを追い出された俺は、途方に暮れた。ホテルで相部屋になったドイツ人に聞いた、評判のいいアイスクリーム屋へとりあえず行くことに。窓からノートルダムが見えるその店はインド人が経営していた。チョコレートアイスを注文。確かに美味い。ハーゲンダッツなど比較にならないほど濃厚な、チョコレートの味と香り。パリの曇天にそそり立つノートルダムを見ながら堪能した。しかし8ユーロは高すぎだろ・・・。場所代か? 店の前でガイドブックをめくって行き先を探しているとモン・サン・ミッシェルの写真が目に留まった。急に生で見たくなり、行ってみることにした。モンパルナス駅へ向かう。 モンパルナス駅で散々迷って、やっとレンヌまでのTGV(フランスの新幹線)チケットを購入。レンヌはフランスの北西にある町だ。チケットは57.50ユーロもした。 TGVの席は窓側。パリから30分も電車に乗ると、畑と平野が広がっている。フランスが農業国であることを実感した。日本の田舎道のような風景がしばらく続き、集落が現れる。集落の中心には教会があり、それを中心に家が建っているようだった。そこに住んでいる人のことを考えると、世界の大きさと小ささを同時に感じる。たまに見かける牛や馬や羊は、体の芯から「ヌボーーッ」としていた。あんなに家畜然とした家畜は初めて見た。 レンヌ駅についたが、モンサンッシェル方面のバス停を探すのにまた一苦労。やっと見つけたバス停で「ポントルソン」という町までのチケットを買う。すでに夕方だった。このままモンサンミッシェルに夜着いたら、観光地ボッタクリ星つきホテルに泊まることになりそうだった。そんな金はないので、手前のポントルソンという小さい町で一泊して、モンサンミッシェルには明日行くことにした。 バスに乗ったのは僕含め4人。すぐに全員が降車して、バスの中は俺と運転手だけになった。レンヌの町からしばらく走ると、窓の外は真っ暗になった。とたんにもの凄い孤独感に襲われる。これまで味わったことのない強烈な孤独感。窓の外には灯りひとつ見えない。運転手がジタンを吸い始めた。俺はずっと日本に残してきた人のことを考えていた。寂しさが膨れ上がってきて、もう少しで泣くところだった。 バスは1時間ほど走って、ようやくポントルソンに着いた。精神的にものすごく疲れて、バス停のすぐ向かいにあったホテルに駆け込む。とにかく人と話したかった。一階がBARになっている安ホテルは一泊18ユーロだった。ホテルのオヤジに英語とフランス語と日本語で「一晩泊めてくれ、一番安い部屋でいい」と交渉。英語はほとんど通じなかったが、なんとか一泊できた。案内された部屋はベッドと洗面所だけのシンプルな、でも小奇麗な部屋だった。寝ようとしたがまだ夜8時。眠れそうにないので町をうろつくことにした。 町にはひと気が無かった。当然コンビニなども無く、店は全部閉まっているようだった。開いている店を探してしばらく歩くと、カフェを発見。カフェには町中の人が集まっているようだった。やっぱりジロジロ見られる。オムレツを素早く食べて、ワインを飲んでさっさと店を出る。 そういえば、日本でこういうカフェってあったかなと思った。町中の人が夜に集まって食事と会話を楽しめるようなカフェ。たくさん店があって、選択肢が増えるのはいいことだけど、町にひとつだけあるこういうカフェもいいなと思う。こういう地味な店なら気負わずにやれそうだ。などと将来のこともちょっと考えた。 ホテルに戻る途中、車に乗ったフランス人の若者に2回も道を聞かれた。首をすくめて「ここの人じゃないから」と断る。彼らは旅行者をからかっただけなんだろうけど、俺はしばらくドキドキしていた。 少し回り道をしたら、踏み切りに出た。真っ暗な線路の上を少し歩いてみた。早く朝が来ないかな、と思った。 |
|